第2話:20歳の女の子に、おやじの気持ちはグイグイと惹かれ始めた

悲劇が始まる?

二人きりになった。
まさか、この瞬間が、この後のドタバタ劇を引き起こすきっかけになるとは。
タイ語の解らない僕でも、片言の英語が通じる女の子との意思疎通はそれほど苦では無かった。
僕は英語すらまともでは無いが、まともで無い同士の英語の会話は、不思議と通じやすい。
これが、どちらかが流暢な英語を使うと途端に通じなくなるから不思議だ。

女の子は、ステージ上で踊っていた時と、どことなく雰囲気が違った。
だが、席に着いた女の子の方が愛想良く思えた。
後で思うに、この時こそが、女の子に対しての恋の始まりだったのかも知れない。
名前を聞いた時に、普通ニックネームを言うが、
この女の子はニックネームだけでなく本名まで教えてくれた。
普通は言わないよな?
僕には気を許してるって事か?
そんな女の子に、僕はどんどん夢中になって行った。
女の子を褒めまくり、自分を気に入って貰いたい一心でテキーラを頼み…

初めての連れ出し

僕が連れ出すことを決意するまでには、さほど時間はかからなかった。
タイミング良く、ママさんが、連れ出すか確認しに来た。
僕は、速攻で首を縦に振った。
そして女の子に「いいよね?」と聞いた。
女の子は、いかにも嬉しそうな顔をし僕に抱き付いて来た。
そうか、そうか、とまるで女の子の扱いに慣れているかの如く女の子の体を引き寄せた。
ママさんに言われた、「そう言うのはホテルでやって」、と。

恥ずかしかった。

ナンパさえした事が無かった僕が、何を偉そうな態度を取って…
タイって国は、とてつもなく素晴らしい国に思えた。

恋する予感

店を出ると、僕は女の子の言いなりになった。
女の子の行きたいゴーゴーバーに連れ廻された。
女の子はかなり顔が広く、ウエイトレスやダンサーをよく知っている。
店に入ると必ず、この子友達だよ、とか、これシスター、とか、ウエイトレスやママさんに至るまで奢らされた。
それで女の子が満足する事で、僕も満足だった。
ただ女の子の嬉しそうな顔が見れるだけで…
僕もそれらの店で知っている子がいた。
一度、連れ帰ったことのある女の子がいるお店では、ちと気まずかった。
遠目に僕を見る女の子や堂々と席にやって来て、一杯いい?、と聞く女の子など、
女の子によって対応は様々だが、今日は女の子連れなので控えめ。
甘え上手だけで無く、奢らせ上手、自分の分だけならまだしも…

本当はこっちの女の子がよかったのだが…

最後に『ギンザ』という知人のやっている店に行った。
そういう時に限って、前に見かけた気に入った女の子が目の前に現れたりする。
その時は、他のお客が着いていたので、声をかけられなかった。
僕はその女の子がとても気に入っていた。
一度はお相手して欲しかった。
たぶん、いま僕の横にいる女の子と会わなければ、
その女の子に惚れていたかも知れない。
その女の子は僕の事を覚えていて、さかんに笑顔で応えてくれる。

もし、この日、先に『ギンザ』に行っていたら…
でも、僕は”ちゃおちゅう(浮気者)”にはなりませんって。

翌日も女の子を連れ出した。

つづく

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