コーンケン県(上):早撃二郎のタイ77県珍紀行

タイ・ガールを求めてキモオタ肥満男がタイ全土を飛び回る「早撃二郎のタイ77県珍紀行」は新しい土地を舞台に。

「東北部(イサン)地方の中心地コーンケーン県でも行ってみようかなあ」などと悩んでいたところ、やっぱりあった〝神のお告げ〟が。

師匠からの絶妙のタイミングでのアドバイス。今回のそれは、次のような内容だった。

「北部との境にある東北部ルーイ県には、ただ一つだけの置屋があるんですよぉ。知ってました?」

本当か?
僕はこの一言に飛びついてすでに飛行機のチケットを押さえていたコーンケーン空港行きを経由しまずはルーイを目指すことにしたんだ。
帰り道はもちろんコーンケーンで遊ぶつもりでいた。

レンタカーで一路 ルーイ県を目指す!

コーンケーン空港に到着したのは4月9日早朝。ソンクラン(タイの旧正月)が間もなく始まろうとしていた時だった。

この時期のイサンはまさに酷暑。朝早くとはいえ、屋外にいるだけで汗が吹き出てくる。

僕は直ちにレンタカー屋のカウンターに向かうとネットで予約しておいた乗用車を借りたんだ。

偶然にも今回の車も前回と同じ日産のアルメーラ。チェンライでは、アルメーラの旅が幸運を呼んでくれた。

ひょっとしたら今回も。幸先がいいかも!

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前の彼女の車もアルメーラだったな。

 

コーンケーンからルーイの中心部までは国道12号から201号に入りひたすら1本道の約210キロ。

コーンケーン県内は所々で集落が点在していたけど、ルーイに差し掛かることはそれもまばらとなってドラゴンフルーツの生産畑があるだけ。

1年と1日の気温較差がタイ最大のルーイ県。この気候を活用した野菜の栽培が盛んで高地では日本産品種の高付加価値野菜などが栽培されている。

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ドラゴンフルーツの畑。伸びた葉の先に実がなる。

 

置屋探しをする前に、やっぱり観光も少しだけしたくなった。

そこでまず訪ねたのがバンコクやミャンマー・ヤンゴンなどで居酒屋の多店舗展開をする「しゃかりき432”」の専用農場だった。

ルーイ中心部からは西南西にさらに約100キロ。延々と緑と荒れ地が続く最果ての地にそれはあった。

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しゃかりき432″の野菜畑。だいぶ高地にあるが暑かった。

 

なるほど広々とした5ライの有機畑。携帯電話の電波もここでは通じない。

しゃかりき432”の店で目にする野菜たちはこの大自然の恵みを受けてはるばるバンコクまでやって来ているんだ。

 

ところが見学も束の間。余りの暑さに30分で退散し今度はここから30キロほどさらに西のダーンサーイ郡に向かったんだ。

カラフルな仮面を付けて踊る国際的な奇祭「ピーターコーン祭り」の村さ。

毎年6月ごろに行われる祭りには世界中から多くの人々が見物に訪れる。この時期には村の人口は一気に10倍以上にも膨れ上がるらしい。

でも僕が行った時は祭の2カ月も前で人っ子一人なく閑散としていたよ。

ルーイでチェックインし疲れを癒す!

ルーイの中心部に戻ってきたのは夕暮れ近くなった時だった。

今夜の宿は簡単に1軒目でゲットができた。ごく普通のダブルベッドルーム。部屋も広く、古いけど小綺麗だ。

これなら女の子も十分に呼べる。それでいて1泊290バーツというからやっぱり田舎はリーズナブルだなと思った。

ここでも運が味方していると感じられたよ。

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このクオリティで290バーツは安い!フロントには日本語が出来るおばちゃんもいる。

チェックインが終わると、まずは腹ごしらえが先だと夜の街へ。

適当に見つけたタイ料理屋でビールを注文した。うまい!ほろ苦いリオ・ビールの冷たさがが五臓六腑に染み渡る。

料理も僕の大好きなヤム・カイダーオを注文。ほどよく腹が満たされると、いよいよ師匠のお告げの置屋を目指すことにしたんだ。

場所はだいたい見当が付いていた。今回は師匠からグーグルの位置情報をスマホにもらっていた。

師匠の頭の中には、置屋などの莫大で貴重な情報が幾層にも複雑に結合しながらサーバーのように収納がされている。

まれに勘違いがあったとしても、そんなのは誤差の範囲。

まずは、それを頼りに現場付近に向かい、後は近くを通りがかったバイタク(モーターサイ)かトゥクトゥクの運ちゃんに確認する算段でいた。

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ここが今回の根城、MT.Grand Hotel。外観はなんてことない普通のアパート。

師匠手作り地図を頼りに置屋探索へ!

時間はまだ午後9時を回ったばかりだった。店じまいにはまだ早く、女の子をゲットするには良い頃だ。

ところが師匠から教えられた路地(ソイ)は大半が闇に包まれひっそりとしている。人(ひと)気が全くなく、深夜の眠った街のようだ。

試しにソイの突き当たりまで歩いてみたけど、普通の民間のガレージの扉が固く閉まっているだけ。

「ここかなあ」とも思ったけど、押し入ってもし違ったら警察沙汰だ。ひとまずソイの入口まで退散することにした。

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師匠に送ったソイ入口の写真。

半べそをかきながら師匠に写真付きのメッセージを送ってみた。

「ここでしょうか?」

すると師匠からは

「うーん、そこだったかなあ」

とつれない返事。

「私が行った時は昼間で、呼び込みのおばさんが立っていましたよぉ」とは言うものの

おばさんが夜までぶっ通しで24時間立っているはずがないではないか。

だがそれを言ってみても始まらない。そこで僕は丁重にお礼のメッセージを送ると自力で探す決断をしたんだ。

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ソイの中は真っ暗で置屋があるとは思えない禍々しい雰囲気。

難航する置屋探索 潜入先であれれ?

現場は市街地中心部を流れる小さな川のちょうど蛇行する辺り。

地図には誤差がつきものだからと自らを励まして、まずは北側のエリアを歩いてみた。「おやっ?ここかな?」

置屋特有の個室と見えたドアが幾つも並んでいるアパートのような建物がある。

階段も1階を入ったところの奥にあるらしく、いかにもそれらしい。そこで僕は抜き足差し足でアパート1階奥の階段付近へと進んだんだ。

その時だった。

「誰だ!お前は!」

陸軍兵士のような迷彩服に身を包んだ体格の良いガードマンが突如現れ、行く手を阻むではないか。手には警棒を持っている。

腰には手錠のようなものも見える。拳銃のような膨らみも見える。僕はもうオシッコがチビリそうになった。

「いや、あの、いや、その…」

と何とか答えようとするが、もはやシドロモドロ。

ようやくお腹を押さえながらも突いて出た言葉が「ホンナム・ミーマイ?トンシア!(トイレはありませんか。お腹を下しているんです)」だった。

すると、兵士のようなおっちゃんは少しだけ頬を緩めてはくれたものの

「ここにはないよ。ここは学生寮でね。部外者を入れる訳にはいかないんだ」と冷たい態度のまま。

野良犬でも扱うように僕を手でしっしと追い払うと、さっさと守衛室へと戻って行ってしまった。

こうして僕は危機一髪の事態を免れたのだったが、それにしても誰だ!置屋の近くに学生寮を作ったのは…。

重い鉄扉の先へ 念願の女と対面!

北側に続き南側も散策してみたが、結局、それらしき建物などは見えず、僕は最初のソイに戻っていた。

「やっぱり、ここかなあ?」

半信半疑、もう一度、ソイの奥まで行ってみることにした。すると、どうだろうか。

さっきまでは固く閉ざされていた左側のえんじ色のガレージが今にも開こうとしているではないか。

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昼間に撮影したなんの特徴もない置屋外観。夜間に見つけられたのは運がよかった。

近くで足を止め覗き込むと、中からは客とおぼしき男と女の子が出て来るのが見える。

やがて男は僕に気づくと照れくさそうに足を速め大通りへと向かって行った。

「ここだあ!」

とうとう見つけた。師匠の情報も僕の直感も当たっていた。僕は客を見送りに一緒に出てきた女の子に向かって言った。

「ヤング・ダイマイ?(まだ、いいかい?)」

すると女の子は一瞬、辺りを警戒する素振りを見せながらも

「早く中に入って」

と僕を招き入れ手早くガレージを閉めて言った。

「いらっしゃい。もう、閉めようと思っていたところなの」

客待ちの女の子はその子ともう一人やや若めの子の二人だけだった。

僕は若めのファンタちゃんという名の自称27歳のラオス娘を選んだ。スレンダーでちょっと小柄なタイプの子。

聞くと、ヴィエンチャン出身でタイにはノービザで入国。10日に1回ラオスに戻り、出入国を繰り返しているとのことだった。

今日は、他の女の子はもう出払ってしまった後なのだという。通常は朝のうちに店が開き、午前零時が店仕舞いの目途と説明を受けた。

屋内でのプレイは一律600バーツ。エアコン付きの部屋にすると100バーツが加算されるということだった。さんざん歩き回って汗をかいていたのでエアコン付きにしてもらった。前金で700バーツ払うと、ファンタちゃんが奥の部屋へと僕を案内してくれた。

ところがであった。奥の部屋とは言うものの、ブロックを使ったその造りはまるで迷路のよう。

太陽の光の当たらない中を、細くて小さいドアや階段が無数にあった。

何度も曲がったり上って下るうちに、僕は北がどの方角なのか何階にいるのかも分からなくなってしまっていた。

それくらい建物内は入り組んでいた。軍や警察の手入れを警戒しての〝対策〟であることは明かだった。

やがてたどり着いた部屋は3畳ほどの窓のない小部屋だった。電気を付けなければ、闇に消えてしまうほどの粗末な部屋。

ここに備え付けられた小さなシャワールームでぬるま湯を浴びた僕は、心なしか疲れを取り身体を癒すと、早速ファンタちゃんとの一戦に臨んだ。

ごく普通の女の子。それ自体は可もなく不可もなかったが、今になって正直に言えば、実のところちょっぴり南京虫が怖かった。

蒲団は薄く、心なしか湿っていた。

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ここが600バーツの部屋。彼女が普段住んでいる部屋だ。

一仕事終えた私は置屋の現状を想う

それなりに満足はできたものの、1時間も立たないうちに打ち止めとなり、店を出ることになった。

ところが、来た道が分からない。ファンタちゃんは濡れたバスタオルとシーツを片付けるために先に部屋を出てしまっていた。

右か左か、はたまた後ろか前か。そう思案しているところへ、懐中電灯を持った別の女が現れた。

漏れた光から見える表情から、かなりの高齢と見受けられた。

高齢の女の後を付いて右へ左へ、階段も降りて上った。こうしてようやくたどり着いたところに、やや大きめのドアがあった。

ドアの向こうに出た僕はその光景に思わず驚いた。ソイの一番奥にあった民家の土間、台所の裏庭に通じる道だったのだ。

ファンタちゃんはそこで僕を待っていてくれた。ニコニコして可愛らしい女の子。また、来てあげたいくらいだった。

その一方で、僕は迷路のような置屋にも感動をしていた。

タイでは軍事政権となって以降、各地で置屋が廃止され壊滅したエリアも少なくなかった。

だがルーイのここには確かで愚直なファンを唸らせる置屋が確かに存続をしていた。

それにしても師匠の情報網には舌を巻くばかりだった。

いつになったら超えられるのかそんなことも感じていた。

置屋を出た僕はまだ床に就く気持ちにもなれずホテルの前にあったバーで時間をつぶしていた。あの置屋はこれからも存続しうるのか。

はたまた軍の摘発を受けるのか。そんなことを思いながら僕は明日訪ねてみようと思っているコーンケーンの夜の街のことも夢想していた。

「男あるところに女あり」

師匠の格言が僕の胸に鋭く突き刺さっていた。(つづく)