※在タイ日本大使館より
第1 はじめに
皆様は安全対策についてどのようにお考えでしょうか。海外では自ら努力しなければ安全は手に入りません。
海外で安全に暮らすには皆様自身が常日頃から安全対策を意識し実行することが大切です。
タイでは、銃器や薬物が比較的容易に入手できる現状等を背景に日本の数倍の割合で殺人及び強盗事件等の凶悪犯罪が発生しております。
在タイ日本国大使館及び在チェンマイ日本国総領事館では、各関係機関の協力を得つつ在留邦人及び旅行者の皆様が安心してタイに滞在していただけるよう努力しておりますが皆様ご自身におかれましてもタイの実情を良く把握し、情報収集を怠らないよう日頃からの安全対策を積極的に心がけていただくようお願いいたします。
第2 防犯の手引き
1.防犯の基本的心構え
タイで安全に滞在するための基本的な心構えとしては次のものが挙げられます。
●近づかない
「危険な場所」には不用意に近づかない、夜間の外出や無用な一人歩きを避けると
いう心がけが大切です。タイ、特にバンコクにおいては、歓楽街や繁華街やスラム街
が混在します。それらに近づかなければ、犯罪被害に遭う確率は格段に下がります。
●慌てない
不幸にも犯罪被害に遭った場合の対処です。先ずは、生命と身体の安全を第一に
考え、場合によっては、犯人の要求に抵抗しない態度を示すことが必要です。なお、
その際、後に警察に被害届を出すときのために、犯行の状況や犯人の特徴などをで
きるだけ記憶し、鮮明化しておくことが大切です。
●楽観視しない
一般的に他の外国と比較して、「タイは安全、治安が良い」と言われていますが、そ
れでも日本国内と比較すれば、市街地におけるスリ・詐欺事件などの犯罪から、時に
は、発砲事件、爆発事件等に至るまで、様々な事案が多く発生しています。「タイなら
大丈夫、安全」と自分の中に勝手な安全基準を持って、タイの犯罪情勢を楽観視して
はいけません。
2.タイ国の犯罪発生状況
タイ警察が発表した2019年の犯罪統計速報によれば、殺人事件(未遂含む)の発生は3,210件、傷害事件が9,323件、強制性交等事件が1,771件、盗難事件等が21,302件発生しております。
また、銃器・爆発物不法所持等事案では20,761人、薬物犯罪事案では366,758人がそれぞれ検挙されており、薬物や銃器の氾2濫が殺人事件(未遂を含む)などの凶悪事案の多発の要因とも言われています。一方、タイにおいて日本人が巻き込まれる被害の圧倒的大多数は窃盗、詐欺等であり、2019年には日本人が強盗致傷事件などの凶悪事案に巻き込まれる事例もあります。
その他、2020年には、日本人男性が自称台湾人の人物にお金等をだまし取られる事例も複数件報告されました。
タイにおける凶悪事件発生率は、日本と比べても非常に高い水準で推移しておりますので、十分注意してください。
(1) 日本人の犯罪被害状況
2019年、タイ大使館、チェンマイ総領事館に報告があった日本人の犯罪被害で、最も多かった被害はスリ・置き引き・ひったくり等窃盗で、件数は162件となっています。スリや置き引きの手口は多様化していますが、複数名がグループになり被害者の注意をうまくそらせた上で犯行に及ぶケースがほとんどです。また、詐欺被害は14件、恐喝・脅迫被害は3件の報告がありました。旅券は、盗難が139件、紛失(盗まれたものか明確でないものも含む)が295件で合計434件が同年中に無くなっています。
(2) 防犯のための具体的注意事項
ア 住居について
住居選びは侵入盗対策において非常に重要です。以下に注意点を記します。
● 守衛・監視カメラ・十分な照明の有無
● 「錠の取り換え」「錠の増設」の検討(元の住人やその使用人が合鍵を持っ
ている可能性があるため)
● アパートのスタッフや使用人に対する十分な指導(主人の許可なしに外部
の人間を家の中に入れない)
● 使用人に対する適度な警戒(使用人による盗難被害の報告もあります。大
切なものは決して目に付く場所に放置しないようにしましょう。)
イ 外出時について
外出時は犯罪被害にもっとも遭いやすく、以下に事例と注意点を記します。
(ア) スリ
● 事例1:市場などの人ごみや電車内などで複数の人物に取り囲まれ、鋭利
なものでバックを切られ、またはバッグのチャック等を開けられ、財布等の
貴重品を盗まれる。
注意点:混雑した場所ではバッグは身体の前に持ち、また財布や貴重品は、
ズボンの後ろポケットやバッグのすぐ取り出せるところに入れない。
● 事例2(抱きつきスリ):歩行中、数名の子供や女性等がなれなれしく身体
に触れたり、抱きついたりして気をそらせ、ポケットから財布等の貴重品を
盗む。
注意点:風俗店や飲食店の多い繁華街を歩く際には、このスリの手口に気
3
をつける。
(イ) ひったくり、強盗
● 事例1:深夜、徒歩で通行中、二人組のバイクに乗った者に、突然刃物で
身体を数箇所刺された後、現金を強奪される。
注意点:日本人が多く居住する地域であっても、夜間帯の単独での行動を
避ける。
● 事例2:歩道を歩いていると二人乗りのバイクがすれ違いざまに手提げカ
バンやショルダーバックをひったくり逃走する(前方から来るバイク、後方か
ら来るバイクを問わない)。
注意点:歩行する際はバックを道路と反対側に持つようにする。
● 事例3:トゥクトゥク(三輪タクシー)に乗車中、後方から来たバイクがバックな
どをひったくり逃走する。
注意点:トゥクトゥク、シーロー(軽トラック・タクシー)等に乗車中は荷物を身
体から離さない。
● 事例4:夜間、一人でソンテオ(乗合タクシー)に乗車する際、助手席(タクシ
ー運転手の隣)に乗車し、人気のない場所で、タクシー運転手にナイフで脅
され、現金等を強取される。
注意点:特に夜間は、一人でソンテオに乗車することは避け、どうしても乗
車する必要がある場合には、他の乗客が乗車する車両を選択するか、後
部座席に乗車する。