第34話:半同棲9日目、別れ…

過去の男

部屋を出ようとした時に、LINEメッセージが入った。それは、彼女からだった。

待って!行かないで!私はあなただけ!

口論している最中、たびたび出た彼女の過去の男の話。
あの世界に携わっていたと言う事は、過去に関係した男も多いのだろう。僕は過去は触れないようにした。
ただ彼女が過去のあの人の方が… それに触れると僕はブチッと切れてしまう。
封印していたはずの過去の事を突っ込まざる得ない。

僕より以前から彼女を知っているパタヤ在住の人が居た。
前から彼の存在は知っていた。ただ彼が彼女を昔から知っていたなんて思ってもみなかった。
僕が彼女とバーに居るところで何度も遭遇した。僕はあまりいい気がしなかった。
直接どんな付き合いかは聞いて無かったが、彼女の彼との接し方、そして彼の彼女をいやらしい顔して見る姿がとてもたまらなかった。彼女はあっけらかんとして、昔からふざけあう仲だと言う。が、僕は別の人から、彼が彼女を連れ出した事のある事を聞いてしまった。
そして彼はそれを自慢げに他の人に話していたと…

以前はかなり派手だったらしい!もっと前はかなり初々しかった様だ!出来ればその頃に出会いたかった
そんな彼に、ある所でばったり会ってしまった。
僕が過去の事を知っているとも知らずに、ふざけている彼女。彼女は僕とはそんなふざけ方をしない。
また嫌な思いをした。僕は以前彼に、彼女と付き合っている事を宣告した。が、前にも増していちゃいちゃしようとする。
それを受け入れてしまう彼女。

タイ人と日本人の感覚の違い

部屋に帰ってから彼女に言った。あの男は嫌いだ。彼女曰く、タイの人はそういうのはあまり気にしない。
だって、私はあなただけだから。日本人的感覚で言えば、本人の目の前でそんな事をしたら気を悪くする、と考えるのでは?
タイ人って、信じていれば、他の異性と仲良くしたり、エッチしたりしたって、大丈夫なのか?
こういう仕事をしていたから? 僕には理解できなかった。彼女に言った。あの男は嫌いだ。
もし僕の方が大切なら、近づかないで欲しい、と。
彼女は、わかった、と答えた。

そんな他の男の話でも口論した。
少なくとも同じ日本人同士なら、お互いの気持ちをわかり合えたのかも知れない。
何故わかってくれない? この言葉、僕が彼女に対して思う以上に、彼女が僕に対して思っている事だった。
僕には単に言い訳して逆ギレしているだけに思えた。ふざけんな! 初めて彼女に対して怒鳴った。
彼女は、タイ人の男は、女に対して怒鳴ったり、物を投げたりしない、そう言った。
ますます僕の怒りは増した。そう言い部屋を出て行った彼女。
もしかしたら二度と会う事は無いのか? その時僕はそう思った。

が、彼女は戻って来たのだ。でも部屋に入ると黙ってベッドに座り、僕にこう言った。
まだ、あなたの事が解らない。だから、結婚も出来ない。しばらく考えたい。ごめんなさい。

すべてを理解した僕は、荷物を手にすると部屋を出た。
バイバイ、彼女。道路でタクシーを待ったが、しばらく待っても来なかった。
頼る人が居ないので、躊躇しながらも彼女に電話してみた。

今更、涙を見せられても…

<もしもし、タクシーが来ないけど、呼べないかな?
>うん… 少し待って… いま連絡してみるから…
<… もしかして泣いてるの?

電話の裏ですすり泣く彼女の声が聞こえた。僕は考えもせずに彼女の元へ走って行った。
ドアをノックするとドアが開いた。そこには彼女が… 目にはいっぱいの涙が… そして、彼女は僕に抱き付いて来た。
僕ももちろんそれに答えた。

愛さえあれば、言葉は要らない? いや、その言葉が通じなかったから、問題が大きくなったのだ。
いままで夜の世界で遊んで来ただけなら、言葉の壁は乗り越えて来られるし、むしろ話せる人よりコミュニケーション能力はあると思う。
でもいざ同棲や結婚となると、それだけでは済まなくなる事がよく解った。

彼女は泣きながら、絶対に連絡するから、と。僕は、わかった、と。
そして、バイタクでバスターミナルまで行き、午後11時の最終バスに乗り込んだ。
ふと、スマホの画面を見ると… 

>I miss u

半同棲、トータル約100時間一緒に生活した。
もう一度冷静になってバンコクで考えたい。本当に彼女が僕の事を必要か?
お金だけで僕の事を必要なら、僕は結婚は諦めようと思う。 

それから数日後、突如メッセージが飛び込んだ。

>Whan u come bank

なに?またまた、問題か?

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