タイの司法制度って?

いきつけのBARにタイ人スタッフが新しく入りました。まだ24歳と若く、エネルギーに満ち溢れている好青年です。
お酒が好きでバーテンダーという仕事に興味を持ち、そのBARで働かせてもらうことになったそうです。しかしよくよくその青年と話していると「?」と思うところが。
何とその青年は弁護士の資格を持っているというのです!マジで!?とビックリ!じゃあなぜバーテンダーなん?
彼が言うには「これからはAIの時代。弁護士なんて仕事はAIにとって変わられる」!!!という理由で弁護士の資格はあるものの、バーテンダーという職に就くことに決めたそう!
なんて面白い青年なんだ! とまぁこんなお話しから、ふとタイでの弁護士って日本と同じなのかな?と思ったわけであります!
タイの弁護士、もっと言えばタイの司法ってどんな感じなんだろう?

タイの弁護士について

ちょっと調べてみるとなんとタイでの弁護士は3種類あるのだとか!

日本で弁護士を名乗ることができるのは
①司法試験に合格し司法修習を終えた者
②大学の法学部等で准教授以上の職位に通算5年以上あった者

ほとんどの人が①を経て弁護士となるが一部②のような〝例外〟があるだけの狭き門。

ところが、タイでは仕組みが大きく違う。
タイで一般的に言うところの「弁護士」には3種類あり、それぞれ許される業務の領域が明確に異なる。

その1
「法的助言」を行うだけなら、何も司法試験を通過する必要もない。タイ弁護士会が承認する機関(通常は大学の法学部)で学位(学士)を取得していればOK。弁護士法などにも抵触しない。

その2
裁判所に書面を提出するなどの法律実務に関与するためには、1に加えて「経験」と「試験通過」が必要となる。①弁護士事務所で1年間の研修を経て弁護士試験をパス、あるいは②先に試験に合格した後に6ヶ月間の研修を受けるかだ。順番はどちらでも構わない。

その3
さらに法廷に立って訴訟を遂行するためには、1と2に加えてタイ法律家協会による学位が必要となる。通常は1年間の研修受講後、得ることができ、裁判官や検察官には必須とされている。

値段が安いからと頼んでいた「弁護士」が、実は法廷に立つ資格までは持ち合わせていなかったということもありうるのがタイの制度。
日本で言うところの「行政書士」をタイでは弁護士と呼ぶという、何とも凄い世界です!!
そもそも大学などで学位を取得していれば「弁護士」と名乗れるっていうのが何とも不思議! 日本では考えられないw

タイの裁判制度

現在のタイにおける最高法規は「2007年タイ王国憲法」。タクシン元首相退陣の引き鉄となった2006年9月の軍事クーデター後に制定された。この憲法にぶら下がるのが、民商法典、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の4つの基本法。こうした法体系を元に裁判所制度が形作られている。

タイの裁判所では、かつての日本と同じ職業裁判官のみによる裁判が行われている。アメリカのような陪審制はない。
そのうえで、「2007年タイ王国憲法」は次の4つの裁判所を設置している。

①民対民の一般民事事件に加えて、税務・労働・知的財産・通商・破産等の裁判、並びに刑事事件を扱う「司法裁判所」

②法令が現行憲法に抵触するか否かの可否を判断する「憲法裁判所」

③民間企業/私人と政府機関/国家公務員間の紛争、あるいは政府機関/国家公務員同士の紛争を扱う「行政裁判所」

④タイ王国軍内における刑事事件を担当する「軍事裁判所」

このうち、①の「司法裁判所」はさらに、「通常裁判所」と「特別裁判所」に区分される。前者は通常の民事事件と刑事事件、後者は少年、家事、労働、税務、知財、通商、破産の各裁判を取り扱う。通常裁判所管轄の事件と少年、家事の各事件では三審制が採られているが、ほかの特別裁判所管轄の事件は二審制。第一審裁判所からの上訴は最高裁判所が受ける。

日本にはない裁判所が、②~④の各裁判所。面白いのは③の「行政裁判所」(二審制)で、政府機関との契約に関する紛争を裁く権限を特定の裁判所に委ねている。

日本では「地方裁判所」「高等裁判所」「最高裁判所」の計3回までの審理を受けることができる制度、三審制を採用している。
タイでは一部の裁判が三審制を採用していて日本とちょっと似ているところはあるけど、日本には無い「憲法裁判所」や「行政裁判所」などがあったりやっぱりそのあたりはタイならではと言ったところでしょうか。